WallStatを使った、木造住宅の耐震性能「見える化」講演レポート

講師紹介

WallStat 開発者中川 貴文
国土交通省
国土技術政策総合研究所主任研究官
◎木造住宅 倒壊解析ソフトウェアWallStat(ウォールスタット)開発者
住宅耐震のスペシャリスト鈴木 強
一般社団法人 工務店フォーラム 講師
株式会社 益田建設 技術企画開発部部長
◎NHKスペシャルにも登場された住宅耐震のスペシャリスト
◎注文住宅イデアホームの商品企画
(日本エコハウス大賞・ハウスオブザイヤー・グッドデザイン賞・キッズデザイン賞他受賞)
寒い中、多くの方にお越しいただきました。皆様熱心に講演を聞かれていました。

晴れる家おかやま事務局主催による「WallStat(ウォールスタット)を使った、木造住宅の耐震性能『見える化』講習会」が、2月6日にコンベックス岡山で開催されました。

『WallStat』とは、国土交通省 国土技術政策総合研究所の主任研究官・中川貴文氏が開発したもので、誰でも無料でダウンロードすることができるフリーソフトです。コンピューター上に、木造住宅の骨組みをモデル化して、地震による損害状況や倒壊の様子を、視覚的にシミュレーションすることができます。

皆さんもハウスメーカーのテレビCMなどで、実際の住宅を機械の上に乗せて振動させることで、どこまでの震度に耐えられるのかという、「振動台実験」を見たことがあると思います。簡単に言えば、その実験をコンピューター上で行うことができるのが『WallStat』です。つまり、このソフトを使うことで、これから建てようとしている住宅が地震によってどのような被害を受けるのかを、詳細に解析することができるのです。

WallStat 開発者 中川貴文 氏

講演では過去に行われた「振動台実験」で使用された住宅と同じものを『WallStat』上でつくり、同程度の地震の波形を与えた映像が紹介されていましたが、破損個所や倒れ方などは驚くほど正確に再現されていました。

また、近年発生した熊本地震をはじめ東日本大震災などで、住宅がなぜ倒壊したか、どのように損害を受けたかをシミュレーション動画を交えて解説されました。コンピューター上で実際に発生した地震の波形を再現できるため、「なぜ建物が倒壊したのか」「建物のどの部分が一番最初に壊れたのか」など、住宅のどこが弱点だったのかが一目でわかるようになっています。「耐震性能を”見える化”することで、構造計算ができない人でも、住宅の強さや弱点を知ることができる」という中川氏。今後起こりうる震災を踏まえて、『WallStat』によるシミュレーションの重要性を訴えられていました。セミナー終了後も参加者からの質疑応答があり、関心の高さを物語っていました。

住宅耐震のスペシャリスト 鈴木強 氏

第二部では、一般社団法人 工務店フォーラム講師の鈴木強氏が登壇されて、自身の住まいづくりの現場で『WallStat(ウォールスタット)』をどのように活用しているのか、実演を踏まえて紹介してくれました。

鈴木氏は講演の中でまず「車をはじめとした工業製品や、高層建築などは入念な耐震シミュレーションされているが、木造住宅に関しては十分なシミュレーションが行われないまま施主に引き渡されていることが多い」という現状を提示されました。

「そのため、私はどのくらいの大きな地震で建物が倒壊するかを、WallStatを使ってお施主様にお見せしています」という鈴木氏。建てる人の希望に沿って住宅を建てることは大切ですが、それに伴う耐震性能のリスクも伝えることで、構造上必要な壁や柱などを納得してもらい、プランニングをすることが重要ということを訴えられました。

「注文住宅は土地やプランによって異なるため、大量生産の工業製品のように実験することができませんが、Wallstatを使うことで、お客様の家を一軒一軒、様々な地震を再現してシミュレートすることができる」という鈴木氏。

講演の中で紹介された動画では、実際にシミュレーションを見た夫婦の様子が紹介されていました。当初は壁のない開放的な空間を望んでいた夫婦でしたが、WallStatでシミュレーションしたところ、構造上必要な壁が無いため強い震度に耐えられず倒壊した映像を見て、耐震性能における壁の重要性に納得されていた姿が印象的でした。

他人事ではないのが、今後予測される巨大地震です。今後、最も被害が大きいと予測されているのは「南海トラフ地震」。西日本太平洋側の多くの地域での被害が予想されています。その発生確率は今後30年間で約70%。死者・行方不明者が約32万人、全壊・焼失棟数約238万棟と予測されています。

岡山は全国的に見ても地震災害のリスクが少ないエリアですが、いざという時に備えるためにも、これから建てる住まいの耐震性能を把握しておくことの重要性を改めて認識しました。

WallStatは振動台実験と同じ結果がシミュレーションできます

設計段階でどの部分が弱いのか、この設計で想定した強度が出ているかを実際に起きた震災の波長を使って検討することができます。これによって、設計精度を高めることができます。

※振動台実験の様子(左)と、WallStatで行ったシミューレション(右)